悠久の時を超えて
骨董との出会いMarumonと初めて出会い、清水の舞台から飛び降りたつもりで買い求めたのがこの古伊万里の徳利。 1989年2月、大阪地方裁判所裏の老松町骨董街にある「多田泉石堂」というお店の置き棚にただ一点展示されていたのを発見、その形と地肌に惹かれて店の中へ。 店主の素朴な人柄もあり、骨董の四方山話に花が咲き、数日通う内、益々そのMarumonと店主の双方に魅了され購入を決意。 決断した丁度その時、小柄で温厚そうな老人が居合わせ、聞くとその人はお店のお馴染みさんで野村泰三という骨董の世界では名の知られた先生と のこと。先生の骨董にまつわる話(「猪口」「伊万里のすべて」等を著作し、骨董にのめり込んだ挙句、財産も家族も失い、アパートを転々とするその日暮しの生活を続ける等)をお聴きするうち、店主の計らいもあり先生に箱書きを書いていただけることに。 翌日、職場の終了チャイムが鳴ると同時にお店に駆けつけ、念願のMarumonを手に入れ、その箱には野村先生による次の箱書きが記してありました。 「この染付けは優品にして希少なり」 野村先生はそれから数年後お亡くなりになったことを後日店主から聞き、また、10数年後、大阪出張で久し振りにその店を訪ねた時には店主も店の名前も変わっており、時の移ろいを実感しました。
高さ18㎝、1620~30年代の伊万里草創期に作られた水指で、 明末の古染付に倣ったと思われる山水図を、力強い筆致で描き出し、 余白との兼ね合いも絶妙に、まとまりの良い気品ある画風を作り出し ています。また、染付の発色も鮮明で図様の格調をさらに高めて います。高台を肉厚に削り出し、高台脇を鋭角に削り上げたその形状は 草創期ならではの素朴さと豪快さを見せています。
1888年12月梅田阪急百貨店で開催されていた師走恒例の骨董市にて 買い求めたもの。直径13.5㎝の小皿ですが、磁肌は乳白色で柔らかく、 釉薬は若干青味を帯びてトロッと流れ、気泡がきめ細かに入り表面を 優しく包み込んでいる様は、まさに初期伊万里ならではの風情を醸し 出しています。また、桃の実一つを大らかな線で右下に描き、その分 余白を広く取ることで、図柄だけでなく磁肌の美しさをも際立たせて いるのも初期伊万里ならではです。 凛とした桃の実と「余白」の持つ余韻とその美しさに、心癒されています。
2007年7月京橋の「木鶏」で見つけたのがこの初期伊万里染付鉄線花文小壺。
磁肌が灰白色で、手取りが重く、生がけの釉薬がとろりとしたところ等、
初期伊万里の特徴とその魅力を存分に見せてくれています。
か細く消え入るような線で草花のてっせんを描き込んだ表絵と、
これとは対照的に太く荒々しい2本の線のみで画いた意味不明の裏絵。
これを策した工人は、どのような意図と思いで、こんなにも奇抜で稚拙とも
思えるような文様を描いたのか、想像が広がります。